2000年9月10日
 またしても忙しい状態が始まってしまい、レスなかなか書けなくなりました。それに、今回も語りたいテーマが多いので、申し訳ないですがまた一括レスということにさせてください。
 そう、ニュースをひとつ、「季刊 島田荘司02」が印刷所からできあがってきたようです。でもまだT橋さんの手もとで、私はまだ手にしていません。
越後屋さん、そんなに大変な病気だったのですか。知りませんでした。大事にしてださいね。ALSとも共通する病気だということ、考えさせられました。確かに体が動かなくなった時、空気の供給を他人の手に委ねざるを得ない恐怖は、われわれには到底解らないものでしょうね。想像することはできますが、解るとは軽々に言ってはいけないでしょう。
 ALS情報と越後家さんの書込みが同時に現れたことには、何ごとか意味めいたものを感じてしまいます。AGさん、続く情報が何か手に入ったら、是非また教えてください。われわれにできることが何か見つけられそうなら、考えたいと思います。このテーマでのオフ会が開けるものなら意義深いことですね。しかしこの種の活動は、関わることはたやすいのですが、続けられないことで関係者に迷惑をかけます。慎重を心がけましょう。
 この種の活動で、いつもぶつかるものは専門家の面子ですね。冤罪問題で行きあたるものは司法の面子、検察の面子、そして警察の面子です。権威が誤りを認めると秩序が乱れるので、誤りを隠すことは正義と発想されます。医療過誤事件においても同様の構造があります。何があろうと医師の聖人性は守られるべきが正義と発想されます。ただこの正義に、金銭もからんだ医師の特権性がこっそり含まれてしまうという点に、問題はあります。
 患者の数が少ないから、この研究では博士号が取りづらいというのは、これは解らなくはありません。能力総体に限りがある場合、優先順位の発想は必要となります。何にでも手当たり次第に立腹することは事態をこじれさせます。しかし、痰の吸引を医師資格を理由にヴォランティアに禁じるのは、人道上あきらかな誤りです。解剖の知識が不足していることから起こる事故の可能性は、この場合は高いとはいえないでしょう。むろん資格主義のよい面は知る必要はあります。医師や裁判官を聖人とすることのメリットもあります。しかしこの場合は、禁止のデメリットの方がずいぶん大きいでしょうね。私自身、大学時代に弟が交通事故で植物人間化した時、痰の吸引は何度もやりました。そうむずかしいことではありませんでした。
 角田さんが書いてくれていたように、日本では救急隊が救急車の中で応急処置することが長く法律で禁止されてきました。救急隊員は、日本では運び屋に徹することが要求されてきたわけです。これでは国際世論上もまずいの声が大きくなって、ようやく国家資格を得た救急救命士に限っては、患者の応急蘇生処置ができるようになりましたが、それも患者が仮死状態になるまで待って、それから医師に電話をかけ、処置の許可を得てからなら生き返らせてもよろしいという、腰が抜けるほどにおよび腰の前進でした。仮死状態になってからではもう遅いので、はっきり言うと、これはもう医者を偉い人にできないくらいなら、患者は殺してよろしいということです。国民の生命よりも、医師の特権性を守ることが優先されているわが日本ですが、それでも国民からの批判の声があがらない、この条件下でうまく立ち廻ろうとする、それがわが威圧国民なわけですね。
 しかしこの判断はまだ解らないでもない。重篤患者にはさまざまなケースがあって、医療知識の不足から、応急処置がかえって患者を死に至らしめるというケースも、それは絶対にないことではないでしょう。日本人には優先順位という発想がありませんから、これが数%あっただけでもう恐れいって辞めてしまいます。しかし、素人が痰の吸引をやったがため、吸引をしないでいる時以上に患者が死ぬとは、いかなる詭弁家も言いくるめられないでしょう。
 頭のよい日本人は、ヴォランティアが患者をわざと殺すケースまでを確率に入れて考え、この場合、資格を持つ医師がやった場合ほどには重い罰則を与えきれないので許可はできない、と考えることがあります。さらには、患者の家族が医師よりもヴォランティアに感謝してしまうことがあり得、これは社会通念上好ましくないと発想されることもあります。医師はむろん否定するでしょうが、救急車の場合にも同様の構造がありました。これは早い話、医師が救急車に乗ればそれでよいわけですが、そうすると若い経験の浅い医師の方が、高年齢の医師よりも患者の家族に感謝され、尊敬されることにつながりかねず、社会通念上好ましくないという分別も働くわけです。
 
 まあ重い話はこのへんで。鈴音さん、はじめまして。とてもきれいなHNですね。発想似ていますが、虫麻呂さんとずいぶん違います。いや、平安時代のサイトならこれもまた雅な名前ですよね。
 ともこさん、唯一さん、はじめまして。
 エマノンさん、まつたいさん、はるさん、ゆのりんさん、妙さん、これからもよろしく。はりぃさん、WS覗きましたよ。少年の問題に関して、よい文章ありましたね。教師の存在にまで踏み込み言及した発想は貴重と思いました。次は、そのサラリーマン教師が何故そうなってしまうのか、つまり登校拒否児童を彼らが何故救えないのかについても、考察を聞かせてください。
 葵さん、お帰りなさい。ポニーのエビフライの写真ですが、ついでき心で撮影してしまいました。申し訳ありません。怒らせてしまいましたか? 顔の虫さされはひきましたでしょうか? それなら今度は一緒にエビフライの写真を撮りにいきましょう。二人でストロボを炊けば、何も恐いものはないですよ。北海道旅行では、日記に公開していない危険とか、ミステリー体験はなかったですか?
 それからみなさん、突然ですが、実は御手洗潔氏が今、学会の倫理規程模索の集まりでLAに来ています。あと一日程度はルーズヴェルト・ホテルに滞在しているようです。そこで、もうあまり時間がないのですが、彼に質問して欲しいことが何かありましたら、急いでここに書き込んでおいてください。私が訊いておいてあげます。
 ただし、石岡君と肉体関係あるのかとは、私はちょっと訊けません。また、いつ日本に帰ってくるのかとか、レオナをどう思っているのかといった類の質問も、彼は食傷気味のようですので別のものにしてあげてください。レオナに関しては、訊いてみようとは私も思っていますが。でもああいう人間ですので、ちゃんと応えてくれるかどうかは保証の限りではありませんが。
 では今回はそんなところで。みなさんまた。       島田荘司
 
 
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