2002年2月5日
視界共有の提案。

 さてみなさん、いろいろな発言をありがとうございました。今回はなかなか考えさせられましたね。
「百万人の伝言板」には、これまでにも面白い議論になりそうなテーマはいくつもあったかと思うのですが、「38歳定年」と言った途端にみんな色めきたって、普段姿が見えなかった人も嬉々として論戦参加という事態は興味深いです。
 この理由というのが、38歳なら不道徳だぞ、味方も多いぞという判断にどうも比重がかかっているふうで、みんなあんまり真面目に考えていただいていないような……(笑)。ざっと読んでみて、勉強の報告と、常識を使った道徳立腹が並んでいるような印象ですね。これでは発言者の立場が弱ければ、例の社内虐めにつながる条件です。そして彼が真面目な性格なら、今後思いきった発言はもう慎まれることになるでしょう。定石通り、定型内で安全発言が繰り返されることに向かい、今後も10年1日のごとくこれを続けるならば、アイデアが出にくい社会が続きますから、われわれはどんどん不利になりますね。SSKでさえこれでは、一般社会においておやです。
 確かにこの人情では、38歳定年などという話になったら、育ち盛りの子供がいようと、家のローンの途中だろうと、知ったことかと言って放り出す会社続出で、自殺者は一挙に10万人でしょうか。しかし企業は必ずそうすると信じて疑ってもみないわれわれも、ではどうすればいいかを考えてみないわれわれも、ずいぶんと下位者発想、受身発想が身にしみてしまいましたね。20世紀は追いつけ追い越せの時代で、アイデアがなくてもモノ作り世界一になれましたから、無理はないのですが。
 「38歳」が眼前にあると、あまりにこれが気になって、議論になりませんね。これはちょっと横においておきましょう。こんなものは現状において実現できるわけもないし、2050年頃、強烈に力をつけてきた中国や韓国のモノ作りの下請けに、日本企業が続々入れられるというような事態が起こった際(もう起こっていますが)、当然出てくる発想です。議論以前ですね。今の人情のまま終身雇用制を維持する限りでは、わが国は将来著しい不利が考えられます。切る年齢の位置は、35でも45でもいいし、また足並みをそろえなくても大丈夫なところまで国民の精神的自立が進んでいれば、むろんばらばらでもいいことです。
 政府がこれを誘導できなければ、houmeiさんが言われるように、民間レヴェルで対応することになるでしょう。しかしこの時点で社員をただ放り出すという以上のアイデアが持てない会社は、これができませんから現状維持で、真面目な海外下請け工場になっていくという判断もいいと思います。日本中の会社が創造心と決断力を持てず、今回のような道徳糾弾を怖れるばかりならば、いっさい動かないというのもまたひとつの判断です。日本人全員がもう1度下請け貧乏時代に戻るのも、現状の人情を改善できなければ仕方のないことだし、決して皮肉でなく、意味のあることと思います。
 どうも似たことを言いながら、見ている場所が違いますね。各発言の有効性などを話す前に、ちゃんと議論の呈をなさしめるために、条件としての視界を共有しましょう。今からいくつか質問をします。これらに必ず答えてのち、自身の考えを述べてみてください。でないと国会答申の模型みたいなことになって、これを越えるものが出ません。彼らに与えるものもないし、第1議論自体が日本型に湿ってしまって、楽しくないです。せっかくSSKを見つけたのにという人もきっといるでしょうから、この人たちのことも、われわれは誠意をもって考えるべきです。ここもまた冷たく厳しい世間となれば、自殺者のブレーキになりません。今この場は、みなで価値ある提案領域を探ろうとするものであって、私をやっつける場ではありません。そこのところをひとつ、充分に心得ておいてくださいね。
 的をはずしているとか、これでは自殺者は減らないとか判断をされていますが、みなさん、自殺者の理由は解っていますか? この前提がまるきり考察されないので、この議論はどうも変テコなのです。
 
 質問1.
 自殺者の理由は、不況ゆえ、ということでいいですか? 8割、9割失業の故で、後は個々人の事情、そういう一般的な理解に完全同意しますか?
 
 質問2.
 それでいいとしたら、今日本の失業率は史上最悪5%台ですね。しかし海外にはもっと失業率が高く、日本より銃器が手に入りやすい国はありますね。ここで日本ほどに自殺が起こらないのは何故でしょうか。
 
 質問3. 
 風邪をひけば風邪薬を飲む、あるいは医者に行って注射をする。これは当然の処置で、こういうことはむろんやらなくてはいけませんね。自殺志願者が、気軽にカウンセリングにかかれる状況を作る、このようなシステム作りは急がれるべきです。そこで、これを実現すると、現在の3万8千人にも迫るという自殺者は、不況下という条件下のまま、4、5千人、あるいはそれ以下というオーダーまで落とせると考えますか?(落とせないだろうと言っているのてはありませんよ)
 
 質問4.
 もし落とせたとしたら、この大量カウンセラーを引揚げても、事態は維持できますか? (できないだろうと言っているのではありませんよ)景気がよくなれば死者は当然減りますね。この時、この政策が一定量の効果をあげたと言われるでしょう。そして将来にまた不況となった際、同じ現象は起きるでしょうか、大丈夫でしょうか。今後日本では、不況と大量カウンセラーとは、セットで考えるという制度にするということですね。

 質問5. 
 日本の教養人の特徴は、21世紀になってさえも鎖国発想、現状と後ろ向き発想ということです。鬱病のあまり、海外と未来が何故だか死角、という事態が長く続いています。今後国際モノ作りの現場はどう変貌するかを洞察し、その際の対海外競争力ということを思考に加味した際、みなさんの今の考えは変化しますか? 変わりませんか?
 
 細かい言葉尻でなく、質問の意図するところに沿って誠実に考えていただければ、きっとみなさんなら充分に価値ある考えを引き出せるでしょう。別に私が何か言う必要もないのではと思うのですが、いかがでしょうね。


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