007さんと

火事場の水死体、007さん宛て

2001年2月10日

007さん、
 メイルいただきました。大変面白く読みましたよ。缶詰色の満員電車、「今日は何もありません」の新聞見出しなど、良い発想の表現、随所にありますね。筋の良い小説と思いました。
 以下、事件の謎解きの部分についてなのですが、いくつか疑問があります。 配線の断線による停電で、リフターのモーターが動かなくなり、それで地下に置いた秘密の重い荷物が1階の床まで持ち上げられなくなった。そこで地下室に水を充たした。そういうことですね。
 このような事態に立ちいたった際、荷物を引き上げようとして試みる方法は、まだ存在しているように思うのです。これをやった上で駄目だったから、と記した方が、説得力が出ると思うのですね。
 まず充電式のプラッターですね。これが小さなEVならば、リフターの滑車にかかったロープの途中をこれでひっかけて、あるいはひっかけたロープを引っぱって、何メートルか走ってみる、すると結果的に荷物が上にあがってくる、という可能性はあるのではないでしょうか。「これをやってはみたが、やっぱりプラッターではあがらなかった」という記述が必要ではないかと思います。
 次に、「たこ焼き屋の発電機」を盗もうとして失敗しますね。すなわち犯人側は、この発電機でリフターを動かそうとした、ということです。つまりこの(ホンダの?)小型発電機で、リフターのモーターは動くということですね。では何故コイン・ランドリーから盗んできた電気で、リフターを動かすことを試みなかったのでしょうか。
 文章の直しを最少とするなら、この電気でポンプは動かせるが、リフターのモーターは動かせなかった技術的理由を考えてみてはどうでしょう。あるいは、つないではみたが、動かなかった理由ですね。
 木箱に入っているから浮力があり、だから周囲に水を充たしたら浮く、という意味の記述がありますが、これは大丈夫でしょうか? 何が入っていたのかは解りませんが、複数の男の力でも持ち上がらず、機械力を使わなくてはならないほどに重いものなら、周囲に水を入れても水底に鎮座し続ける、という可能性の方が高いと思います。これは落下速度の実験ではないのですから。
 ただし、浮力の援助によって、人間の力でロープを引いても水面まで持ち上がるようになる、という可能性は充分あるでしょう。あるいはプラッターでも、水面までは引き上げられるようになると思います。だからここは、根本的に変えてしまう必要はないと思いますが、「水を入れたら浮く」という断定的な表現はやめた方がよいと思います。そのくらいの重さの物なら、人力でもなんとかあげられそうに思えますから。
 しかしこんなに重い非合法な事物というのは何でしょうね。
 「プレハブの中から電気を引いていたら、集金をした時に」気づく、というのは、「集金人がやってきて、コードが隣家に伸びていて、ポンプが稼動しているところを目撃したら」という意味ですね? 表現ちょっと解りづらいですね。もう少し丁寧に書いた方がいいでしょう。
 それから、そういうことなら、川の面より高い地下室に水を汲み上げている時にも同じ危険があるわけですね。水を充たすのに1週間もかかっているわけですからね。犯人側としては運よく集金人に出会わなかったか、集金のスケジールをぬった合理的な計画をたてたのか、でしょうね。このあたりにも、ちょっとばかし御手洗のセリフで触れておいたらどうでしょう。
 着地の文章、「お見かけした時から射手座だと思っていた」という表現がありますが、ちょっと見かけただけで射手座と解るのは、上昇宮のみ(太陽宮ではなく、上昇宮が射手座であるということのみ)とする方が論理的です。太陽宮が射手座だろうという推察は、長い付き合いになれば見当がつけられる、という程度です。ただし、上昇宮が射手座だということは、一瞬にして見当がつき、さらに、「この人物は明け方の生まれである」という知識か、判断できる理由を判定者が持っていたなら、太陽宮も射手座である、と推察することはできてきます。
 同様に、上昇宮がさそり座だと信じた理由があり、この人が、夜明けより以前、午前3時くらいの生まれだと信じる理由があったら、やっぱりこの人の太陽宮は射手座だと解る理屈になります。だからこの文章のように、お見かけしたところ射手座(太陽宮が)だと思いましたので、と述べられる状況もあり得ます。しかしこの背後にある理屈を多少は述べないと、ただ占星術を間違えている、ととられる危険があります。ちょっとここの説明は長くなりますが。
 それから前日の御手洗さんは、LAに住んでいる男が、誕生祝いをしてくれるというので、石岡君とその男の3人でその店で待ち合わせていた、という理解でよいのでしょうか? ちょっとここは、2人が何をしようとしていたのかが解りにくいです。もう少し特定して説明した方がよいですね。
 そんなところですが、筋は大変いい物語です。面白い発想ですね。上記のようなポイントを修正していただければ、むろん収録したいですから、是非そうお願いしたいのです。質問あったらください。

島田荘司。


2001年2月10日

007さん、
 もうひとつ忘れてました。地図に川の位置、欲しいですね。どこに川があったのか。これは推理の材料ですから。ではまた。

島田荘司。


2001年2月1日

007さん、
 いくつか質問にお答えします。まずしゃくてぃさんの関連、サウンド・トラックのことから。この問題は、もう大半解決しているように見えますが、ひとつ残っていると思えることに、考えを述べます。
 サウンド・トラックとして選ぶ音楽は、作中時間の1978年を含んで、それ以前に発表された音楽に絞った方がよいと思います。「異邦の騎士」は、すでに「思い出の夏」のような、ノスタルジックな作品群に属していると思います。日本のもので言うと、「神田川」あたりかな。
 上野へのかっとびとか、荒川土手ジャンプのシーンなどを支えるリズミックな音楽、スピードの音楽が、はたして当時すでに存在したかがちょっと不安ですが、この頃すでにチックとかマイルス、ラリー・グラハムなど、先鋭的なロックのリズムが現れていたので、充分探せるのではと思います。
 志乃さん,結構原稿に追われてらっしゃるようなので、あなたから早めに連絡しておいてあげた方がいいかもしれません。

 それから小説の方ですが、こちらが改善の提案を言い、あなたがすぐ直してくれるつもりなら、最低〆きりの2週間前というところでしょう。しかし、今Pattyさんとやっていますが、少しずつ原稿送ってもらって、漢字をどこで遣うか、どこをヒラくか(ひらがなとするか)などを心得ながら書いてもらうという方法は、むろん可能です。Word文書か、TXTファィルで添付して送っていただけたらと思います。Pattyさんは、もう漢字の用法の点は、呑み込んでもらったように思います。
 それを1回か2回やったら、あとはもう全部書いてもらって送ってもらうと。というのは、段落を前後させたりといった、構成をいじる可能性があること(これが最も重要と思います)、短編ですから、全部を書くのにそれほど時間はかからないと思えること、などからですね。
 〆きりのどのくらい前かというのは、この直しの量によりますね。それから出版の時期を、どれだけ守るかにもよります。できるだけ早い方が、それはむろんよいです。しかしながら、5月発売という計画は、少々厳しいであろうと内心思っています。
 ではそんなところで。

島田荘司。


2001年3月7日

007さん、
 非常に面白くなりましたね。とてもいいので、ざっと筆を加えながら読みました。このようが読みやすいと思うのです。
 これは傑作です。直すのは、この上にさらに直してもらえませんか。これは掲載は決定していますから、締め切りは遅れてもいいです。私の方に送ってもらうだけでもいいです。南雲さんには私の方から言いますし、送ります。でもむろんあなたの方で、南雲堂に完成品を送ってもらってもいいです。
 あなたも文章修行をすれば、理系ゆえの面白い短編小説の書き手にもなれるかもしれませんね。阿刀田さんのような感じかな。
 今回のタイトルは、「火事場の水死事件」とした方がすわりがよいし、トボけていて、鋭いと思います。
 本当は、水死体であることも、バーで早々と提示するのがよいと思っていたのですが、このようにすれば、前半で謎の提示の量は充分かと思います。ちょっと読んでみてください。
 ランドリーの金額、このくらいでないと謎が強くないと思いますが、しかしこれだと、金を入れないと電気が取れないという仕掛けでないといけないように思います。理系の知識から、これができるものなら是非考えてみてください。

 Movieの評判、大きなものでしたね。G−Rに、まだ余波があるようです。そこで、「WS刊のflash」も、近く表紙から直接行けるようにして、売りにしたいと思っています。このボタンを左側の一番上に置きたいと思っていますが、そこで、一応以下のようなご相談をしておきます。
 「ポルシェ911の誘惑」の文字が飛び去るところ、第2弾としての試作品の時ほど、風の音と動きがジャスト・ミートしていないですよね? これをぴったり合わせることはできませんか?
 ダウンロードの時ですが、文字だけではなく、あそこに何かエンターテインメントを置くことはできないでしょうかね。あそこでやめられる危険があります。
 「Movie」ボタンから、私のコメントがあるページに飛び、それからコメントの下に置いた例の007ボタンでダウン・ロード開始、というのがよいと思っていますが、別の考えがあったら教えてください。
 この「Movie」のボタンの下は、「作品リスト」にしようと思っています。リストが、なかなか綺麗に出来上がってきましたので、表に出したいと思っています。 ではまた。作品筆加えたら送ってください。

島田荘司。

 

戻る