穴井さん宛て

2001年11月16日、穴井さん宛て

 氷川さんのもののタイトル、私は「A.U.ジョー」がいいと思いました。これは「Artificial Uterus」、つまり「人工子宮のジョー」という意味です。この小説は、幻想の英雄ジョー探しの小説ですので。これで行くなら、着地部分の数行に、わずかに手を加える必要があるでしょう。これだけならゲラでできますね。
 しかしもし元気あるのなら、謎の「ジョーはどこにいる?」という視点を常に抱いて、もう一度最初から(加筆する気分で)点検していただけるなら、この小説のモーションはもっと太くて、力強いものになると思います。「人工子宮で生まれたジョー」という空想をみなに信じさせてしまい、A.U.という用語を何度か提出してもいいですしね。
 ではまたメイルします。

島田荘司。


2001年11月18日、穴井さん宛て

穴井さん、

 編者の言葉書きました。はみ出すなら、行追いこんでください。このあと、帯について考えます。秋元さんの携帯に電話ください。
                 島田荘司。

書き下ろしアンソロジー、21世紀本格。
 編者の言葉         島田荘司

 これだけが唯一の新世紀本格のスタイルではないという反論が当然出るので、これらに対して、以下を繰り返し述べておきたい。今後の私自身、この方向での創作がすべてではない。
 意図したわけではないのに、集まった作品は、クローンやキメラなどの発生生物学、脳、AIと進化心理学、狂牛病、PCのヴァーチャルと、見事にテーマが分散し、しかも網羅されて、ほとんどダブることがなかった。たまたま現れたこの結果を見て、当アンソロジーの意義と成功を確信した。各作品ごとに拙文の解説を付したが、どうしても内容を一部明かしてしまうので、嫌う人はこれは後で読むようにしていただければと思う。八つの瞠目の新世界に、いきなり飛び込んでいただきたい。

島田荘司。

 

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