2001年1月29日
あさなぎさん、
メイル受け取りました。「冬のオルカ」を、「パロサイ2」に収録することは可能と思います。これもとても筋がいいです。そこで以下のように修正、加筆し、WINならWord文書で、MACならTXTファイルで添付して、こちらに送ってもらえませんか。これから何回かやり取りしましょう。
以下のようにすること、あなたがどうしても嫌だということなら別の作品にしてもいいですが、それを確認するためにも、まずはこのトライをしてみてください。
銀行強盗の空中消失が、きわめて不可能性の高いものであるという説明を、可能な限り早い段階で、しかもできるだけ詳しく、徹底的にやって欲しいのです。
具体的に言うと、ゴンドラに乗っていた清掃員は、犯人とあきらかに違う人相であり、体型であること、犯人とは一面識もないこと、ビルの窓はすべて填め殺しであること、トイレの窓も同様であること、犯人はたまたまこのビルに逃げ込んだのであって、事前にロープだの、縄梯子だの、ハングライダーだのの準備は絶対にしていなかったこと、ビル足もとのどんな路地にも、風に飛んできたような男の死体はなかったこと、そういったことですね、これを、物語が始まってすぐに述べて欲しいのです。これは御手洗、石岡、二人会話でやります。そうしておいてから、さまざまな小説的要素を付け加えていく。刑事がやってきたくだりも、それから回想で述べる。
具体的には、いきなり御手洗の、ビルの上での現場検証シーンから、物語をスタートする。この時、石岡君もそばにいる。しかし彼はずっと無言で付き添っている。
その後、石岡、御手洗は二人になり、上に述べた会話をする。つまり今解決編手前にある石岡君と御手洗さんの会話をずっと前に出し、現場検証のすぐ後に続けて、不可能状況であることを徹底強調、それから石岡君は、すぐに関内駅から田舎に行ってしまう。
彼が横浜に帰ってきてから、御手洗さんは謎解きをする。つまり天野刑事の前では、なんだかんだ言って、それまでずるずる引き延ばす、ということです。
これで本格マニアも吸引でき、傑作になりますよ。改造する際に、あなたのやりたい手入れもしておいてください。
もうひとつ、現在のタイトルは、ちょっと迂遠にすぎますね。空中密室だの空中消失だのという、探偵小説の記号の方向で、何か詩的な言葉を発想してみてもらえませんか?
質問あったらください。改善作品戻ったら、さらに磨く場所あればいいますし、私がちょっと筆を入れて、送り返してみてもいいです。
では待っていますからね。頑張ってください。ほかにも作品あるなら、見せてください。しかし今度のパロサイには、これで行けると思っています。
島田荘司。 |