鍋澤さんと

パロサイ、「明晰夢」

2001年1月31日

鍋澤さん、
 すいません、遅くなりまして。ずっと仕事に追われつづけています。お名前、いつも拝見していますよ。ようやく仕事、ちょっと一段落で、これを書けています。
 パスティーシュ小説、面白く読みました。作品、大変な可能性を持っており、「パロサイ2」に収録したいと思うのです。しかし現状のままでなく、少し磨いてみたいのですね。これで絶対に素晴らしくなるというアイデアがあるので、以下で述べます。この方向で、加筆修正をやってくださる気はないでしょうか。駄目ならまあしかたないですが、このストーリーは筋がいいですよ。ちょっと挑戦してみてもらえると、大変嬉しいです。

 1.まず、御手洗・石岡の会話から入るのではなく、いきなり犯人が街をさまよい、憎い相手の家の前に行く描写。警備員が入り口に立って見張っている、といったことを述べてから、犯人壁を抜けて部屋に入り、被害者の前に立ち、驚愕する男の首を絞めて殺す、という描写。
 2.それから犯人、回想して、殺意を抱くにいたった彼の事件について説明する。 3.こののち、ようやく御手洗・石岡の会話が始まる。外側からの事件の見え方の説明。
  4.御手洗・石岡、現場に行き、そこが厳重、強固な密室であったということを実地調査し、確認する。
 5.御手洗・石岡、警察に留置されている犯人と,無理に面会する。これは以前恩を売った刑事に頼んで無理に面会、といったあたりにする。
 6.犯人と御手洗との会話。これによって御手洗、事態の真相を見抜く。
 7.石岡君に求められ、御手洗、詳しく説明する。犯人が、酔いつぶれて眠っていた酒場に行って説明するのもいい。

 こういう行き方にして、タイトルは断然「明晰夢」がよいですね。この言葉には大変な魅力があります。「パロサイ2」の目次に、多くの作品が並んでいるところを想像し、中にこの漢字がひとつ混じってあるとことろイメージすると、,たぶん一番格好いいでしょう。
 これで傑作になること請け合いです。「パロサイ2」には、SSKの常連メンバーのHNがずらと並んでいる方が楽しいので、是非これをトライしてみて欲しいのですが、どうでしょうね。しばらく考えてメイルください。よろしくお願いします。

島田荘司。


2001年2月19日

鍋澤さん、
 本日やっとサーヴァ復活らしく、届いていますよ。これで完全復帰と願っています。
 「明晰夢」期待しています。柱の一本となるんじゃないかなーと、おぼろに思っているんですが、とにかく改稿したもの、見せてください。この次は、もしまた改善の必要感じたら、具体的に筆を加えてから言います。あれはうまくやれば傑作になりますよ。リョウさん、007さん、リンコさん、妙さん、続々来ています。みんないいですよ。では。

島田。


2001年3月9日

鍋澤さん、
 筆加えました。送ります。編集者のことは失礼しました。男性でしたね。 作品すごくいいですね。戦前の海野十三、米田三星といった人たちの探偵小説作品を連想させます。やはりこういうストーリーは、空中にあるのだなぁと思います。才能のある人がそれを掴みとって、作品化するのでしょう。また何かできたら見せてくださいね。
 冒頭の数行は、犯人のものか、それとも石岡さんのものかの説明がこの位置だとむずかしそうだし、いきなり手記という方が迫力あるのでとりましたが、どうしても生かしたければ、よく考えて、ゲラでまた入れてください。でもこの方がいいと思いますよ。
 漢字遣い、読みやすいものに直しておきました。でもこれはとてもいい作品です。医学生が書いたみたいですね。私の方で南雲堂に送っておきます。後で、住所、本名、メイル・アドレスを、南雲堂に入れておいていただけないですか? 後日ゲラが送られますから。
 ではどうもありがとうございました。またいつかお会いしましょう。

島田荘司。

 

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