houmeiさんへ

2002年2月16日、houmeiさん宛

houmeiさん、

 メイル、ありがとうございました。事情、だいたい解りました。新掲示板に関しては非常に有意義な提案なので、前向きに考えたいですね。しかし私が常任の議長をやる時間があるかどうかですね。それに君なら、充分にこの役をやれるように思います。ただ、今のところのあなたは、少々刹那的発想の批判分子と一部では思われているようですから、今回のメイルのような、冷静で、客観的思考のできる人材であることをアピールする時間も、しばらく必要なのかなとも思いますが。それから、WS刊で(あるいはこれを入り口に)やった方が、確かに参加者は多くなるのでしょうね。
 私の意見は、「政治板」と名うつと、小泉内閣の不手際をあれこれあげつらうみたいな様子がイメージされて(実際、こちらの論題チャージが少しでも遅れればすぐそうなるでしょう)、そうなれば、あまり上品でも創造的でもないですね。テレビでよくやってますから。日本のよりよい将来の形を模索しようとする時、自民党だの汚職だのは、その一部分というにすぎません。これは、もっと日本のよりよい将来の状態を探る板、といった方向の命名がよいように思います。

 「38歳定年制」に関しては、なるほどそういう受け取り方もあったのですね。これはまるで予想外でした。あれはミステリーの手法を用いたものです。最初から結論を示してしまうと、多くの人はそそっかしく興味を失ってしまいますし(実際、総理大臣でもない人間の言うこと聞いてやってもしようがないというのも事実でしょう)、こういう人のあとの興味は、ただ提案の揚げ足取りとなりがちです。少しずつ手の内を見せながら議論を進めていくと、たくさんの人がついてきてくれますし、各人の思考も深まります。
 君がそのように感じたことはよく解りましたが、相手の提案がどの程度の深度を持っているか解りませんから、初見でのせっかちな決めつけは絶対にまずいです。誰かの提案に対して、同じ横暴をやっている島田荘司を想像してみてください(日本の上位者は、しょっちゅう威張ってこれをやりますが)。そして相手の考えがいよいよ本領を発揮しはじめた時に、焦ってやみくもに否定して廻る私を考えてみてください。SSKはたちまち楽しくなくなり、信頼を失います。
 目的地は日本社会の改善と、自殺者の減少と明示してあります。自殺の理由はひとつやふたつではありません。これはもう複雑怪奇で、BBSで手軽にやれるような問題ではないですね。したがってその実現のための方法もまた、非常に複雑になるでしょう。その説明は、当然ながら簡単には終りません。ただ、社会の改善がなくては長期的な問題改善は望めないということくらいは言えます。この2者は、固くリンクしており、双方向からのアプローチが不可欠です。これはもうみなの了解事項となっているでしょう。あなたも解っていると思っていましたが。
 この方向での私の把握の概略を、もう1度話してみます。これまでの議論から、自殺は、語弊を恐れずに言えば、まあ2方向の要因から成っているというふうに言えます。ひとつは、まだ不明ですが、人間関係の深いあたりからの何か。そしてこれは、日本社会に特有のものではないかと見当がつけられつつあります。これはおそらく、これこれのシステムだというような、局地的な形で言うことはできないでしょう。そう見えても、問題はそのシステムを選択し、作り出した何かなのです。
 そしてもうひとつは、引き金としての不況です。
 さてそうなると、このどちらかをブロックすると、とりあえず自殺は停まる理屈になります。短期展望で考えるなら、要するに失業者に仕事をあげることですね(もっと短期で考えればカウンセラーがブロザックをバラ撒くこと、しかし翌年は倍増でしょうが)。つまり雇用を拡大することです。データからは、これで少なくとも3、4割は減少しそうです。さらに各方面の良循環が起これば、この割合はさらに増すとも考えられます。まあ生き延びても、それは先のブロザックゆえと大差のない、生きる屍のサラリーマンかもしれませんが。
 ではどうやって雇用を拡大するのか、有形のモノ作りの方向で言えば、それは当該の会社に金を引っ張ってくることですね。モノが売れれば、製造のワーカーが必要になります。ではどうやって引っ張ってくるのか、ということです。
 今のママではまったく駄目です。フレックス制とかいろいろ入っていますが、逆にこれは収束しつつあります。自分のアイデアでないのなら、9時から5時まで働いているふりをしている方が楽だからです。なぜそのサボりが可能になっているかというと、日本の労働が、藩制時代の遺伝子もあって、茶道や華道みたいな勤労道になっており、服従行儀ばかりを重視しすぎているから、抜け道ができているわけです。結果、会社はますます明治時代製の「平等」を言わざるを得なくなり、欲しい人材に、これはつまり会社に大量の金を誘導してくれる人材ということですが、この才能に、それに見合う給料をあげられない、その結果、引き抜かれるにまかせつつあります。今後、国際規模でこれが加速する危険があります。
 こういう思想自体を解体して、企業はマネーの論理で動いているという原則、道徳ではないのだということを示す、そしてこれを言っても人間関係が荒れないオトナ同士の人情に、社員を成長させておかないと、時代に乗り遅れ、日本には有能な人材は残らなくなる危険があります。彼ら、たとえば青色ダイオードの中村修二さんのような人に年俸一億を上げたくても、それをすぐやればいいというものではなく、やれば平等原則違反(嫉妬)で社内秩序は崩壊なら、あげる金も金庫にないから用意できません。まあ1人くらいならいいでしょうが、国際的なモノ作り大企業なら、こういう人が何十人も欲しいのです。
 海外にモノをうって地位を築いてきた企業が、21世紀もできたら純潔を守りたいと願うのもおかしな話であり、また社内で流動する金の規模が小さければ、全体の商売自体も徐々に小さくなります。当たり前のことです。
 アメリカの企業の重役は、十数億円もの年俸を取っています。日欧の重役の20倍にもなります。これは年功序列で行儀よくしていれば、50代、60代になったら、会社の方でご褒美にあげよう、なんていうようなレヴェルの額ではありません。そしてアメリカの会社だけが、夢のような豊かな世界に存在しているのではありません。日本とまったく同じです。
 あなたの考え提示がないので、こちらで書きましたが、ここは重要なので、反論あればお願いします。別になければ関わらず、無視でいいですが。

 あなたの掲示板への提案は、大変よいものです。これは私の言った「個人攻撃」という言葉もそうですが、「誹謗中傷」という言葉の解釈が問題になりますね。誹謗中傷する方は、もちろん自身の悪意を、平等主義でくるんで自己納得させ、攻撃をしかけますが、これは中傷にあたると反撃されれば、「あれが誹謗中傷なんて思いもしなかった、よりよい結論を誘導たいと思えばこそ言葉が厳しくなったのであって、解ってくれると思った」と必ず言うでしょう。言わなくてもいい攻撃言葉をあえて言ったとは、自分では意識がありません。またそう言い出した時には、もうこれが心よりの本心になっています。したがってこういう人の発言権を削除したら、権威をかさにきた横暴というストーリーで正義の怒りにこの人は燃え、この前のアラシクンみたいに、度ごとに現れて復讐するというふうになりやすいです。ミステリー文壇で、百万回も経験してきたことですね。
 彼らは、道場破りという要素が強いのですね。私に勝つことに意味があるのです。だからこの人情なら、ある程度これはできるかたちにしてあげなくてはならないのでしょうねぇ。やっつけるべき有害な人間は、他所に無数にいるのですがねー。しかし、議論を勝ち負けに勝負することを一定量容認したとしても、それがフェアな勝負になかなかならないのです。
 たとえば私が、北朝鮮からのミサイル攻撃を防がなくてはならないと言って、その提案をしたとします。しかしAクンが、朝鮮人民の立場から、レイプ魔日本人に正義の鉄槌を下す必然性を説き、さらに田中真紀子さんのように、ジョークと嘲笑とをごっちゃにした日本ふうユーモアで、あざ笑って私を否定したとします。実際にミサイルが飛んできて、新潟あたりに被害が出たら、同じAくんが今度は日本人の立場に変わり、ほら日本に被害が出た、だから(北朝鮮でなく)島田は許されないと言います。ダブルスタンダードで、この手を使えば否定の自由度はぐんと増します。そして議論に馴れていなければ、これにだまされる人も多いでしょう。
 これはあきらかなルール破りですが、個人攻撃なのか、誹謗中傷なのか、微妙なところです。何故なら、島田はサイトの中心人物だから、対等な個人とは少し違う、という日本型の情緒発想がありますから。このように、さまざまな要素が無限につまみ食いされ、正義の形に組まれます。正直に言えば、最初のプルーフ不発行ワクに関する質問への君の回答は、なかなかこれに近いのです。
 しかしこれはもう議論のルール破りと私が判定して、君は議論からはずれましょうねと私が言ったとしたら、島田は横暴だ、反則だと言われます。つまり権威(?)の逆差別がすぐに起こるわけです。相手は何をしてもいいのだが、同じことを私がやるのは許されない、と言うことになるのです。これは威張らない人間にはいささかアンフェアですね。
 そうなら、同じくこっちもなんでもありの土俵を用意し、人目のないところで喧嘩をしようと言うと、この人は人前で島田をやっつけるのでないと意味がないので、一転紳士的になってしまいます。それではとまた掲示板に戻ると、この人、しばらくはおとなしいのですが、だんだんにまたもとの個人攻撃に戻っていきます。
 こういう事態を回避するにはどうしたらいいのか。毎度これでは嫌がらせに限りなく近く、仕事ができませんね。

  私は議長に徹するのがいいか、私の意見は、みなが結論を導きやすいように協力発言するというに留めるか。そして、今日的な重要テーマを常に熱心に提示し続けるか。しばらくこれを真面目にやっていれば、みなの方でもテーマを出してくれるようになるだろう。
 さらに、WS刊は国会ではないのだから(つまり実行はできないのだから)、投票はやめるとか。こういう議論になると、参加者は限られるでしょうからね、投票判定の意味は疑問です。また投票があれば、これを意識しての勝ち負け勝負、つまり日本ふうの面子闘争になりがちに思えます。議論の各部分を、各人が今後の参考にしてくれたらそれでいいのではないでしょうか。
 今のところWS刊でこれをやるなら、2階か3階の掲示板をこれに替えるか、それともhoumeiさんのHPの掲示板を、WS刊とじかリンクで結ぶか、が現実的ではないかと考えますが、さらにそちらに意見はありますか? あとでhoumei掲示板を覗いてみましょうか。

島田荘司。


2002年2月21日、houmeiさん宛

houmeiさん、

 昨日は1日追われていまして、メイル書けませんでした。失礼しました。論文のテーマが決まりましたら、タイトルなど教えてください。
 回答をありがとうございました。これらについて、私の考えも述べてみます。

 まず定年ですが、私はこれはもう必要ないと思っています。これもこれまでと同じなのですが、一見あなたと結論が違いますが、結局似たことを言うことになります。定年というのは、日本型の、60才で全員をいっせいに追い出すという仕組みの定年制度のことです。
 定年とは要するに、年功序列で、年齢が上がると、労働の割に給料が高くなりすぎているから、これを下げられないなら、もう出てもらわないと企業としては金がかかりすぎるということでしょう。年俸を低く(合目的にして)抑えられるなら、企業としてまだ是非欲しい人材は、この年齢層にも多くいるはずです。江戸時代には、90才でお城勤めしている人材はたくさんいました。逆に、50歳でもう要らないと判断できる人もいます。こういうあたりをうまく整えられるなら、企業は競争戦力の整備ができます。スポーツのチームと同じです。
 私は終身雇用制度も、年功序列制も要らないと思います。これらはワンセットで、1つを取り出して語ることができません。日本の今後の国際競争力という点から理想を言えば、これらすべてはもう時代に合わないのみならず、日本が21世紀の国際競争の第一線で頑張ることを想定すれば(それをしないならよいのですが)、すべて不利に働く要素です。
 これらは、貧しい1950年代、労働争議が吹き荒れた時代に、企業内労働組合とともに、企業と組合との妥協の産物として日本に生まれた三本柱です。貧しさや、日本型儒教や、日本語や、すべての要求が総合的に合わさった産物です。かつてのキャッチアップの時代には功を奏して、これは高度経済成長時代の良いシステムとなり得ましたが、これからの自由国際競争の時代には合致しません(実現できると言っているのではありませんよ。思考実験です)。会社にとって必要な人材は、80才まで会社にいてくれていいと思います。81才時、まだ必要と会社が考えるなら、年俸契約をさらに更新すればいいと思います。
 しかしこれは単純な実力主義というのともちょっと違います。会社の職種に照らしての力です。物差しは無限にあります。日本の教育現場のような1本ではありません。またこれは、23才くらいの時期ではまだ解りません。
 ただしここで年金の問題が出ます。現在の年金の制度は、こんな時代の到来を想定していませんから、転職すれば不利になる仕組みとなっています。「石の上にも三年」が美徳の国ですから。税制と合わせ、これらはいじる必要がでるでしょうが、そもそも年金という制度が今後もうまく機能するかどうか、疑問です。年金を自分で運用するという制度が、日本でも始まっていますね。日本人の感受性ではこれはなかなかむずかしいでしょうが。
 現在の減点法的な発想は、あなたも言う通り、後ろ向きで駄目ですね。ポジティヴに加算方式の、ポイント制に近いものにして、多くのポイントを持つ者が高価な人材というかたちで、目安にしていいと思います。たとえば、非常に価値のある薬品の発明開発に携わった人材にはポイントを与える。これを直接管理した、上役だがアイデアは出していないというような人物には、儒教発想は無視してポイントは与えない、というようなことです。

 もうひとつ、販売の方向で、たとえばセルラーフォン、これは日本製の方が遥かに優秀なのに、ウェストコーストは今韓国製が席捲しています。ここにビジネス・チャンスがあります。遥かに魅力のある日本製セルラーをこの地に売り込み、インフラを整備し、会社に100億の金を引っ張ってくるから、自分に年俸2億をくれというようなアメリカ人の人材と複数契約していきます。むろんこの時に、日本人上役に力や魅力がないなら、成功報酬契約を蹴られ、どんどん詐欺に引っかかるでしょうが。
 国際市場でヒットする製品とは、要するにそうするための細部の発明や、支える無数のアイデアの集積です。これを続けたメーカーが、続けられないメーカーを下請けにしていきます。この構造は、今後どんどん進行するでしょう。したがって、こういうアイデアを絞り出せる人材には高い報酬で報います。外国からの引きぬきに対抗するということもあるし、こういうつばぜり合いに勝利を続け、部品を下請けに出す側にとどまるための戦略です。先に述べた方法を取らないと、この雇用のための資金を企業が準備できません。あるいはできても人材確保のワクが狭くなり、競争力整備が不充分となります。

 デフレに関してですが、あなたの考えにも一定量賛成しますが、2、3割を占めるらしい今の不況のための自殺というのは、要するにこれだと思うのです。ただの失業では人は死にません。今マンションなどの資産価値は1/4に下落しています。30年ローンなどある人は、理不尽に降って湧いた膨大な借財の、ただ返済をしているだけです。昔のように、それならとマンションを売ってもチャラにはできず、これでも莫大な借金が残ります。
 しかし職があればこれもただ気分が悪いだけですが、この状態で職を失えば、そしして再就職がかなわなければ、もう死ぬほかはないですね。 一方、何億というタンス預金をしていた人は、同じ金でマンションが4つ買えますから、これを貸して左団扇となります。こういう不公平はありますね。
 そして今のデフレは豊かな不況と言われます。みんな海外旅行に行ったり、ブランド品購入に行列したりするが、将来の不安から金を使わない。つまりこれは、まだ値が下ると感じて、下げ止まるのを待っている状態でしょう。だからこれはここが終点と、場所を示してあげれぱ、金はたぶんどっと廻り始めるでしょう。そのための方法に何があるかです。

 構造改革ですが、これは信用の回復ということ、それはむろん確かですが、私は要するに官の無駄使いをやめさせようということだと思います。今の状態を家の財政にたとえると、家計がまずくなってきて、このままだとヘタすると一家心中だぞという状態、ではどうするか。方法はそんなにたくさんはないです。一家の収入を増す。財布のヒモを締める。そして家の外でいい顔をしたがり、無駄な金を使っている親父の行動を細部までチェックして、これをやめさせると、こんなところでしょう。日本経済の規模は500兆円、累積赤字が666兆円、国の予算規模が85兆円、返済が無理な額ではないでしょう。
 しかし、オヤジの無駄使いをやめさせるという考えは、これは緊縮財政の方向で、これを徹底する必要は当然ありますが、これを完成しても、家計のピンチの決定打とはなりませんね。それどころか、これは出費抑制ですから、ますますデフレ圧力を増します。要するに、家への収益を増すという方向でないと家族はハッピーにならないし、あちこちで金が動き出す連鎖は起こらない理屈です。
 国の場合は財務政策と金融政策という2発想から、大蔵省を抱き込んで紙幣を刷るという方法もありますね。また、ケインズ的に道路を作るなどして、周辺の関連産業を鼓舞していく、ということも考えられます。ただこれは、かつてのアメリカ以外には成功例がほとんどないようですが。
 ともかく、官から無駄使いする権限をとりあげて、トンチンカンなことを言わせないようにする、大学の教育内容まで細かく取り決める、金融機関を縛る、第2外国語を強制とか、国民の望ましい国語力の達成なんて変なことももう言わせない、とやっていくなら、これは地方分権まで行かないと、中途半端で終るであろうと思います。
 現在の中央集権は、明治政府の植民地化への恐怖から、この回避のために緊急避難的に組まれたものです。愚民前提の政策ですね。しかし今最も愚民は誰かというと、国会中継を見れぱあきらかです。もう必要ないから、江戸時代の地方色容認体制に戻ってもいいでしょう。中央の省庁で、是非とも必要なものは少ないです。

 ともかく、根本的な解決をもくろむなら、海外から金を引っ張ってこないとまずいということです。金さえどんと入れば、各方面での良循環は期待できます。むろん歪みや、不公平は起こるでしょうが。今の国内は、外でものを売ってできてきたものであり、その態勢を整えてあったのに、全然売れなくなった、規模が大幅縮小した。そこで、井戸の底の狭い草地の草を大勢のヤギで食い合って、餓死者を出しています。モーゼを大金で雇って、広い草地にみなを連れ出す必要があります。
 しかし、もう贅沢はいらない、つましく小さな経済で、というのもよく解ります。デフレを容認し、ものの価値をあるべき位置まで落とし、全体の規模を分相応まで下げればいい。これもまた日本人らしい道徳感性です。自分は家を買う金がなかったのだから、買えた人のことは知らないという意地悪がいくらかありそうですが、これには目をつむるとしても、この考え方には見落としがあります。日本人オリジナルの料理、蕎麦も、天麩羅も、みんな材料は輸入だということです。日本人の食料の8割は輸入です。そのために、海外の熱帯雨林を犠牲にしたり、罪深いことをしてきています。それを言いたいなら、「蕎麦天麩羅はもう食べない」ということも言わなくてはなりません。しかし塩のお握りだけを食べると、たとえ言ったにしても、米作りのトラクターは、百%輸入の石油で動いています。
 日本は貿易立国であり、対海外競争をもう止めるわけには行かないのです。それは道徳ではなく、ただの負けです。だから、21世紀も行きぬくための整備を、きちんとしなくてはなりません。今ならまだチャンスがあります。日本製のモノの方が優れているからです。ただ販売力で負けているのです。しかし、韓国、マレーシアに、追いつき追い越されてから上のような方法をとっても、もう手遅れとなります。私が言っているのはそういうことです。

島田荘司。


2002年2月24日、houmeiさん宛

houmeiさん、

 遅れがちですいません。メイルいただきました。何はともあれ、主張の重要部分に賛成していただき、大変嬉しく思います。
 私がこれまで述べたようなあたりをまとめ、まずあなたに送りますから、これをあなたが受け、外貨獲得産業については賛成するが、国内産業に関しては、私はこのような補足案を持っています、とする文章を続け、一連の親記事としてBBSにあげるというのはどうでしょう。この書き込みでは、質問の8に関しては言及しないのですが、これはまた後日ということです。
 これをやるにしてもやらないにしても、もう少しあなたの提案を詳しく述べて欲しいのです。国内のサーヴィス産業などに関しては、38歳定年制を取り入れなくていいということですね。これは解ります。現実的にはむろんそんなものでしょうね。しかしさらに1歩を進め、むしろ取り入れない方がよいとして、その理由を述べてみてください。私自身も納得したいので。あなたの主張、述べた時のことを考えると、来訪者に対してこの点が少し弱いように思います。
 38歳という数字にはこだわらないのですが、サーヴィス業に関しては、今後本業とバイトとの区別がどんどんなくなっていくだろうと思います。それからサーヴィス業も、XBOXだの、AVやPC関連、自動車ほどではないにしても、やはり高い値がつく人と、安い人とは出るでしょうね。TVタレント崩れの人などで、月給百万円の20代はごろごろ出そうです。フィットネスクラブのインストラクターなども、若くないとできませんね。この世界はもう年俸契約制を取り入れています。そしてこちらの方こそ、終身雇用による高齢者は、さして要らない産業のように思います。
 また、みんないっせいでないと不安な日本人のことを考えたら、内需産業も足並みを揃える方が、思考実験としては面白くなります。
 厳しく反論する気はありません。もう少し自説を述べてみてください。
 官僚に関しての意見も、楽しみにしています。

島田荘司。


2002年3月23日、houmeiさん宛

houmeiさん、

 メイルいただきました。ありがとうございます。運転免許がないのですか。今時ちょっと貴重ですね。まあ偉くなったら、運転手付きで車に乗ればよいのですが。
 現在の代理投稿スレッドへのレス、これは是非付けておいてください。でもまた板が荒れることのないように、是非ニュートラルな口調でお願いします。
 レスの次は、新たに親記事をたてていただくのもよいと思います。もう少しだけ具体的に教えてください。今後、ずっとテーマを教えて欲しいとは思いませんが、次のものに関してはどんなものか、よろしければ知りたいです。

 今日本は、ワークシェアリング一色という感じがしますね。現状打開のアイデアは、例によって輸入のこれひとつしかなく、日本社会を変える、最後にして唯一の切り札と、みなが考えているふうです。さいわい掛け声だけに終るかもしれませんが、実行してうまく行かなかったら、オランダに責任を転嫁できる、といういつもの逃げがあるのでしょうか。あなたはこれをどう思いますか? 考えがあれば聞かせてください。
 私はこれには賛成ではありません。もちろんこれがうまく行く局面、職種はたくさんあるでしょうし、父親が家にいる時間を多くしてのメリットも考えられます。しかしリーダー否定の日本人のことで、行くぞ一億WSだとなり、適応の選択判断ができず、日本の唯一の強みを消してしまう危険性もあると思います。
 日本人の職人芸の高度さですね。これは世界に冠たるものです。特にモノ作りの方向でこれが導入されると、競争力を失いつつある日本製品に、いよいよとどめの一撃ともなりかねません。どうも無難に無難にとやっていると、悪い方向に、悪い方向にと選択を重ねていきかねません。

 日本の失業率もそうですね。5・5%とか言っていますが、アメリカが5・7%、ユーロ圏が8%、日本は幸いこれら以下に見えます。しかしこれは例によって日本型の道徳トリックで、「まったく仕事に就いていず」、「すぐ働きたいと考え」、「もっか職を探している」、という3つの条件を厳に充たしている(好ましい)人の数だけで統計を出しています。わがお上にとって「失業者」というのは、こういう人だけなんですね。
 就職を探しながら1時間でも日銭稼ぎした人は含まれず、絶望してハローワークに通うことをあきらめた(怠惰な?)人も含まれません。欧米ふうにはかれば、日本の失業率は13%ともいわれます。わがお上は、例によって外見をおもんばかって詐欺をやっているわけで、これはもうやむを得ない行為、あるいは道徳そのものと発想しているわけで、雪印の中間管理職と同じ発想です。

 日本の税制はネックなのですが、実際には鉄格子ですね。禁止税的な発想を多く持っています。これがまた、「やっちゃいかんぞ!」という親父のトンチンカン説教なのですね。車社会には、いくらでもこれがあります。これについても書きたいことは多くあるのですが、税制についての意見あれば、これも聞かせてください。

 近くSSK内に、「秋好事件」支援サイト、「Top Pigeon」というものを立ち上げたいと考えています。再審請求の現状を報告することを第1目的とする予定です。次は「第7銀河」がスタートを待っているのですが、その次ですね。
 代理投稿にレスをつけてくれていた小波涼さんという方、この人は本名を岩波明さんといって、東大の精神医学部の助教授なんですが、彼が管理人やってもいいと言ってくれています。このサイトの使命、コンテンツなどに関し、意見、希望があったら、これも是非教えてください。
 ではまた。

島田荘司。

 

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