orihikaさんへ

2002年3月2日、orihikaさん宛

orihikaさん、

 お久しぶりです。メイルをありがとうございました。ずっと日本に戻っておりまして、失礼しました。
 大変に充実した、よい内容と思いました。以下に貼ったあたりを定年の問題ともう少しからめて論じ、よろしければ是非レス投稿していただけないでしょうか。今日やっとnyaoさんのよいレスが付いていましたが、あまり良いレスがつかないので、このくらいの良識的で誠意的な考え方の提示は、是非欲しいところです。
 やはりリンチとなれば燃えるが、だんだんそうでなくなってきたらやる気がなくなるという日本型の病を、ここにも見るべきなのでしょうか。これまでのレスを見ていても、こんな様子なら自殺者が出るだろうなと妙に納得するような内容が多く出たことに驚かされました。
 発言する方がつい眼前に熱中してしまい、このごく簡単な自己俯瞰、把握ができなくなってしまうようです。Mさんのものも、あれだけ言っていても、やはり例の日本型発想ですね(笑)。税制のことはネックになるので、ここでは便宜上考えないことにします、と以前のスレッドですでに述べているのですが。
 日本の税制自体が父権説教というところがあり、禁止税という性格を持たされています。一人に一億も年俸をあげるのは、平等秩序の原則上好ましくないわけですね。日本の課税精神は、多くこれですね。この禁止税がなければ、日本の企業は私が述べたようなことを必ずやっているはずです。社員に2億をあげるには4億を用意しなくてはならないので、やむなく38歳リセット制を発想せざるを得ないわけです。この税制下で提案のようなことをやるには、大変な予算がかかります。
 ディーゼル車の優遇税制が花粉病という名のディーゼル粉塵病を作り、ボンバン優遇税制が軽四輪の外観を極端に貧しくして、この良いアイデアを失速させ、3ナンバー、5ナンバーの大型車禁止税が結局大型車を大増殖させ、専業主婦への非課税が、女性の社会進出を阻みという調子です。フィンランドでは専業主婦は全体の5%で、これが離婚を多くしているともいえるから、わが為政者は秩序維持上、これを恐れているのでしょう。
 高速道路で高い通行料をとるのもこれで、国民に車を持たせないようにし、持つなら軽4だぞ、というトンチンカンな説教をしています。しかしこの高速道路の収益が大変な腐敗を呼んでいます。聖人君子が愚民を治めるという儒教の理想が、ムネオくんたち聖人君子の強烈な腐敗を生んでいます。
 それからもうひとつは国籍の問題もありますね。明治の炭坑法で、「炭坑経営者は日本国籍の者」とうたっているようですが、日本企業には日本国籍の者をという気分が、政府には潜在的にあります。外人助っ人とか、日本企業が無国籍化することは、政府は歓迎しないでしょう。

 ところで、SSK内に秋好事件支援サイト「トップピジョン」をたちあげようと今準備しています。よろしければこれに協力していただけませんか? もう少し準備が進めばまたご連絡します。今「代理投稿」スレッドにレスを付けてくださっている小波涼さんという人、この方は東大の助教授で、岩波明さんといいます。彼が管理人をやってくださると言ってくれています。だから宮本さんは、時々投稿してくださるといった程度でもいいですが、もっと厚い関わり方でも大歓迎です(副管理人とか)。今Matthewさんが、扉のデザインをやってくれています。これに関しても、ご意見あれば是非ください。
 「トップピジョン」というBBSも設け、ここに書きこんでくださった方の文章は、プリントアウトして、例のパンフ「トップピジョン」にしようかと思っています。むろんその旨を板の冒頭にうたいます。
 orihikaさん、今会計事務所にお勤めなら願ってもないです。というのはこのサイトは、「秋好事件」の現状報告をする機能を持たせると同時に、寄付金を集めたいという目的も持っているからです。というのも、調べてみると、これから再鑑定が何百万と費用がかかる可能性があると解ったからなんです。そこでこういう発想になりました。今後の費用を私一人で担うのは到底無理です。
 税金の控除と引き換えに寄付を募りたいのですが、そうするためには、どのような手続きとか、条件が必要なものでしょうか。一定金額以上という線引きも必要なのでしょうね。今友人の弁護士さんに調べてもらっていますが、専門外です。宮本さんの方がご専門ではないでしょうか。こういう点、ご存知なら、是非教えてください。よろしくお願いします。
 またメイルをお待ちしています。ではまた。

島田荘司。


 自殺の一類型に過労自殺があり、数年前から俄然注目されています。僕は最近過労死についてあまり勉強していないのですが、エリートではない一般のサラリーマンが過労自殺するのは日本に固有ではないかと思っているのですが、僕の思いすごしかもしれません。
 毎日の殆どの時間を会社の仕事に使い、会社内での評価が人間としての評価と一致してしまったならば、人間扱いしてもらうためには何でもするのが普通でしょう。人間扱いされずに生きるよりは、死の危険を冒してでも働き続ける、あるいは犯罪でも何でもやってしまう。それが普通だと思います。
 雪印や外務省に限らず数々の経済事件で普通の社員が犯罪を犯し、普通の企業の一般社員が過労自殺をしてしまう。端から見れば異常でも社内の人間からは同情され、それでもその同僚の社員達も犯罪の証拠隠ぺいに荷担し、あるいは異常な勤務実態を隠すことに荷担してしまう。各人が自分の良心に従って行動できるようにしなければならないことは皆が分かっているのに、皆、誰かがやってくれるのを待っています。
 仕事上の評価と人間としての価値を切り離すのは容易とは思えません。仕事上の失敗や能力の低さを以て人間として否定した場合に人権侵害となり、犯罪として認定されるようになり、また、出世しなくても、失業しても世間から冷たい目で見られないような世の中になればよいということでしょうか。人間扱いされない恐怖から解放しなければなりません。特効薬は僕には全く思いつきませんが、きっとそうも言っていられないのでしょうね。
 戦時中拷問にあっても決して自殺しない人達がいたようですが、自殺しない支えは何だったのでしょうか。僕は戦争には無知なので分からないのですが、自殺理由と対比すれば何か参考になるでしょうか?
 あまり効果的な内容になりませんでしたが、もう少し時間がとれるようになればまた何か書こうと思います。今度はたぶん38歳定年制についてです。僕は以前社会保険労務士の事務所にいたため、これまでの常識が邪魔して、とても38歳定年制という発想は出てきませんでした。とても興味深いテーマです。これまでの労働運動の成果を後退させると誤解されやすいテーマですが、BBSで前向きな議論になることを願います。

島田荘司。

 

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