奇想、天を動かす

 始まりは、浅草で起こった殺人事件だった。原因は、導入されたばかりの消費税十二円をめぐるいざこざ。犯人も犯行動機も明白と思われたこの事件に、しかし吉敷竹史は、容疑者である老人の態度から疑問の念を抱く。殺人の真の理由を知るべく調査を開始した吉敷は、やがて次々と意外な事実に遭遇する。

 老人は行川郁夫という仮釈放中の人物だった。だが、彼を知る人物は口をそろえて、彼は人を殺すような人間ではないという。

 行川にかぶせられた冤罪の疑惑。謎に包まれた被害者桜井佳子との関係。さらに吉敷は行川が刑務所で書いた『ピエロの謎』という本にゆきあたる。夜行列車の閉じた空間から消えたピエロの死体、白い巨人の話。しかも、創作と思われたこの話と酷似した事件が、昭和三十二年頃、札沼線で起こっていた。はたしてこの物語は事実なのか?

 三十年の時を経て存在する、謎に満ちた二つの事件。捜査が進むにつれ明らかになる、歴史に隠された幾多の悲劇。そして、ついに吉敷は、複雑に絡み合った事件の真実を突き止めた。

<登場人物>
吉敷竹史/行川郁夫/桜井佳子/牛越佐武郎/杉浦邦人/徳大寺兼光/
呂泰永/呂泰明/小谷拓康

えむえむ