秋好氏より、安部尚志弁護士への手紙

2000.2.29付

 (前略)

 扠、その問題小説ですが、口絵にまでなって、しかも、三五枚から四〇枚にもなろうかという特集で、もう、大感激!! でした。

 
拝読していて、嬉しいやら有難いやら、もったいない思いで胸がいっぱいになり、涙で字がかすみ、一度目の読み終わるまでが大変でした。わずか五日の間に、十指に余る目を通し、その度ごとに、島田先生始め、弁護団の先生方、三山氏、徳間書店の橋本昭一氏、岩渕徹氏、加地真紀男氏各位へ、心から胸に手を合わせ、感謝を繰り返し居ます。本当に幸せ者だと思いながら、何としても皆樣方のご厚志を無にしない様に頑張りたいと、心新たに決意している輓近です。一月一七日、本当に有難う御座居ました。そして、御苦労様でしたと心より申し上げる次第です。

 
しかし、これは、本当に凄い事ですよね。雑誌という性質上書店店頭に並びますから、嫌でも表紙上の活字は目に止まります。しかも、美女の胸部辺りに堂々と居座っているのですから、宣伝効果は覿面かと思います。

 
しかも、目次部分で、「死刑に異議あり!」とあり、かつ、巻頭口絵”秋好事件、その後”と二箇所に書かれているのも編集者の凄い配慮があると受け止めます。そして、口絵三頁からの写真や本文中の数葉の写真といい、この問題小説の顔に仕立てて下さっている事は、本当に「凄い!!」としか表現し得ない程です。これも偏に島田先生の御声名の賜物であり、その意気に感じた徳間書店の方々のご厚志以外の何ものでもないと思いますし、此処までに至ったのは、外ならぬ弁護団各位先生方の弛まぬお力添えのお陰と思っています。本当に関係者の皆々様方への心からの感謝でいっぱいですし、心より有難うと御礼申し上げる次第です。殊に、徳間書店の皆樣方への御礼の方法がないことが無念でならないです。只、こうして沢山の皆樣方のお力添えを賜りましたことが、今後の訴訟に大きな効力を発揮してくれるものと思いましたし、これから先、司法と戦うに最大の勇気を与えて頂いたと考えます時、私自身、ある時期、感謝の意を表す一文を問題小説の一頁にでも書かせて頂けたらと思いますし、その時には、判決の不当さを大いに指摘させて欲しいとも考え、夢は広がって参ります(笑)。

 
処で、安部先生と堀先生は確かり全国区になられ、大変うれしく思っています。一寸、高橋先生が共に写真に出ていないのは残念ですが、でも、フルネームでお一人お載りですし、推理作家として、またのチャンスに写真が掲載される折もあるでしょうから、我慢して頂けたら…などと思っています。でも、この丸昌の前での写真ですが、丸昌の時計が存在していた位置は、恰度、島田先生のサングラスの位置の真上、テントに「1285」の数字(電話番号)が見える、その「8」の真裏辺りになります。

 私が立ち寄った時は夜でしたから、出口入口であるこの戸がこの写真通りであったかどうか記憶にないのですが、考えてみたら、紺地に白抜き文字で「大衆酒場 丸昌」と書いた暖簾が懸かっていたので戸の上部は、その暖簾に隠れていて、見ていないのですね。

 
なお、島田先生がお一人で写られています陸橋は何処なのか見当がつかないのですが、まさか、例の跨線橋という事はないですよね(笑)。

 
これら口絵の写真といい、本文中の地裁飯塚支部の玄関前といい、隨分と懷かしい風景に出会って、うれしく思いつつ、何だか私の記憶に残っている飯塚支部の風景と重なってくれないので少々戸惑いもしました。

 
つまり、玄関前の左右の植え込みは、私の居た頃は前庭の両隅にのみあり、玄関前は大広場になっていたと記憶してるのですよね。それにしても、確定後お会いできなかった島田先生のご尊顔を久々に拝し、正面からのお写真は、隨分と感じが変わられたように感じました。何だかふっくらとして、お太りになられた感がありますね。撮す角度で、隨分と感じが異なるものだと、夫々の写真を拝見しつつ思ったものですが、あの何時も明るい堀先生が隨分とむずかしいお顔で写られているのには、少々驚きました(笑)。

 
丸昌前での女子大生、中山聡子さん、こう見ただけでも控え目で静かな感じのするお孃さんですね。なんとなく中山さんがお写りになっているだけで、この丸昌前の写真が凄く絵になっていますね。中山さんが立っている位置が赤いポストの存在を薄めていて、中の四人が活かされています。もし、中山さんがもう少し島田先生よりか、居なかったら、赤いポストがやたら目障りになって、構図のセンターがぼやけてしまいますから、この写真を撮った加地さんの芸術性には驚きます。凄くよい写真が撮れていると思いましたし、光り輝いていると思いました。

 
それと、以前から、余り体調が良くないとの知らせもあり、気になっていたのですが、こうして皆樣方とお写りになっている三山氏の御尊顏を拝して、そんなに遜色のないお顔色に大安心致しましたのも、大きな喜びでした。

 
いろいろと右の様な事も感じ考え、大変意義深く拝見、かつ、拝読をさせて頂きました。本当に、著名な作家先生が私如き者の為に、多くの批判や非難をものともせず、作家生命を賭け正義を貫こうと頑張って下さいます事は、私個人の事のみに終わらず、冤罪に哭く死刑囚やひいては死刑廃止の道に繋がる偉業なのです。今の日本でこのような島田先生に続く作家先生は希である事は、悔しい限りです。

 
(中略)

 
もし、島田先生や三山氏へ何らかの連絡などが御座居ましたら、右の如く、感謝と御礼を申し上げていますとの御鳳声賜りますれば大変幸甚に存知ます。何卒、宜敷御高配お願い致します。

 寒さもあと少し、どうぞ風邪など召されませぬよう益々の御活躍、御清栄をと心よりお祈り申し上げ擱筆致します。

不一

二〇〇〇年二月二九日   大城英明拝

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